地域一体型「ラグビーコミュニティ」設立について

                   NPO「静岡東部ラグビーコミュニティ」 代表理事 小黒晴二

 

 
 

 

 

 


1.            はじめに

 

静岡県東部地区ではラグビーを楽しめる環境を作るためにラグビースクール、高校、大学、社会人クラブチームが一体となった地域一体型「ラグビーコミュニティ」を設立しました。平成14年1月にNPO法人の申請し、社会的に認知された団体として積極的な普及活動を開始しました。

2.             現状と問題点

現在ラグビーそのものの人気が落ち、危機的な状況になっています。静岡県東部地区のラグビーも例外ではありません。現状を説明しますと、社会人クラブチームに関しては沼津クラブ、熱海クラブ、東芝機械クラブ、自衛隊クラブ、セミブラックス、富士川ATF、日大三島とありますが単独で15人をコンスタントに集めることができるチームは3チームしかありません。トヨタ東富士、ミクリアクラブ(御殿場)は廃部になりましたし、東芝富士(現東芝キャリア)、富士通、旭化成は3チームで富士川ATFを結成して活動していますが既に限界に来ています。ラグビーを好きな人間は多いのですがクラブを存続することが各クラブリーダの大きな負担になっています。高校は沼津工業高校、桐陽高校、沼津学園が活動しておりますが指導者の部員集めの苦労は大変なものです。沼津高専は部員が数人しかおりませんし、名門だった沼津商業も今は活動していません。ラグビースクールも情熱ある指導者に支えながら活動しておりますが人数集めの苦労は絶えません。また、高校卒ラガーマンが社会人クラブに入りやすい風土もまだ出来ていません。

3.             NPO法人化

すでに北海道バーバリアンズ(札幌)と曼荼羅クラブ(東京)はNPO法人先駆者として、子供から大人までラグビーを楽しめる地域クラブを目指して活動しておりますし、藤沢市ラグビースクールも存続危機を乗り越えるためにNPO法人化し本格クラブの道を歩みだしました。静岡県東部地区のラグビーをもっと発展させるためには社会的に認知されたコミュニティとしての活動基盤を作る必要があると考えています。NPO法人化のメリットは公的な施設が借りやすくなること、運営資金(寄付金や助成金)が集めやすいことです。しかし、それよりも大きなコミュニティを運営することで人が集まりやすくなり、そこに社会性が生まれ地域振興につながることに一番意味があると考えます。ジュニア(幼稚園、小学生)、ユース(中学生・高校生)、シニア、オーバー35才、クラブ代表チーム、レフリーチームと大きな組織を目指します。職業、年齢、国籍、性別に関係なくオープンな団体として、「静岡東部ラグビーコミュニティ」は活動を始めました。あまりラグビーが盛んな土地柄でないため、現実的に1つのクラブでNPO化できるチームが存在しません。そのため地域一体のラグビーコミュニティという考えを持ってスタートすることにしました。そのほうが多くのラグビー関係者にも受け入れてもらえますし、個々のチームの問題点もカバーしやすいはずです。NPO法人は公益活動を行うことを目的とした団体です。本コミュニティの場合は「ラグビーの普及、活性化、青少年の健全育成、地域交流、まち創り」が公益活動になります。法人格をもてば、社会的に正式に認められた団体として活動の幅が広がってきます。ただし法人としては健全で透明な組織運営の義務も求められます。事業報告や収支報告などの事務処理に時間と手間がかかりますが、法人格をもつメリットが大きいと判断し、今回、クラブリーダ・スクール指導者・高校指導者の設立者10名によって「静岡東部ラグビーコミュニティ」をNPO法人として県に申請することに決めました。(4月末に正式認可予定)

4.             芝生グランド

社会人の静岡東部リーグではすでに全試合芝のグランドで行っています。幸いなことにサッカー先進県である静岡県は素晴らしいグランドが複数あります。(愛鷹競技場、愛鷹スポーツ広場、裾野競技場、熱海姫の沢、富士通グランドなど)芝の競技場で試合を行うことで参加者は増えています。怪我が少なくなり楽しい気持ちでプレーできます。しかし、まだまだ簡単に借りるようなシステムになっておらず苦労しています。(NPO化で一歩前進するとは思いますが・・)これからはラグビースクール・高校にも芝生グランドでプレーできるようにサポートします。やはりラグビーは芝生でプレーするスポーツですし、これがラグビー普及の原点になるのではないでしょうか。

5.             国体支援

平成15年には静岡国体(わかふじ国体)があり、ラグビー少年(高校)の部が裾野会場にて開催されます。関係者も準備作業には入っています。いいチャンスなので地域一体型のコミュニティクラブで記録係り・練習会場係り・競技運営係り等のサポートしたいと考えています。国体のボランティ集めも大変ですがNPO法人化することで力を結集することができると思います。

6.             インターネットの活用

2年前に「静岡東部ラグビー情報」というサイトを開設し情報を提供しています。インターネットの普及にともないアクセス数も増えてきました。最近では他県からの試合の申込みや、転入者からのクラブ問い合わせも多く非常に役に立ってきたなと感じています。試合日程や打合せの連絡も非常に楽になり、スピードも上がってきました。(手紙などよりも10倍は効率が上がるのでは・・)15人揃わないチームの情報を事前に集め、うまく合同チームを作ることが可能になりました。さらに隣県のチームと交流試合が組めるようなシステムや、試合結果などを関西協会や日本協会に通知できるシステムを考えたいと思います。HPでは単なる情報提供だけでなく啓発的な記事を増やしモチベーションが高まるようにしたいと考えています(チーム特集、レフリー特集など)。また、日本各地のラグビークラブやNPO団体ともインターネットを通じて交流をしていきたいものです。最近では日本ラグビー協会のホームページもかなり充実していると思いますし、協会の方針もわかりやすくなっています。われわれのような地域レベルとのネットワークを強化して日本ラグビー全体の発展に貢献したいですね。日本協会が全体を把握できるデータベースを作ってくれるといいですね。(システム構築は大変ですが・・・)

7.             普及活動

一番の目標は小中学生への普及ですが、これがかなり大きな課題で時間がかかると思います。現在ラグビー経験者の小学校教師と企画していますが

タグラグビーやタッチラグビーを体育の事業に取組んでみようとしています。本コミュニティから

貸し出し用のラグビーボールを支給できるような体制を早く作りたいですね。また、日本協会が提案している「はじめてのラグビーボール」地方版も是非実現したいと思います。ラグビーボールが身近なものに感じることができれば、自然にラグビーに関心を持つ人が増えるのではと期待しています。また、ラグビー部を持たない高校の生徒がプレーできる環境を是非作ろうと考えています。

現在、チームごとに練習をしていますが、月に2・3回合同練習日を設けて、誰でも参加できるようにすれば実現可能ではないかと思います。

(もちろん簡単ではないと思いますが・・・・)

もう1つの取組みはオヤジチーム(オーバー35)の活動です。今までは30歳を越えると引退する人が多かったのですが、芝生グランドで、しかも同レベルの対戦相手があればまだやってみたいという人が大勢います。そのようなプレーヤーを集めてチームを作ることにしました。ちょうど小中学生の子供を持つ年代なので子供にラグビーを知ってもらういい機会になると思います。月2回の

練習日を設け(疲れない程度の楽しい練習)活動しています。

8.             イベント

年2回ラグビー祭を企画しています。スクールの試合、オーバー35の試合、代表チームの試合、

タグラグビー・タッチラグビーを行い、広範囲の年齢が楽しめるイベントにします。特に母親・妻が楽しかったと思えるようなものを作れればと最高ですね。ただ、ラグビーを楽しむだけでなく家族との交流が生み出されるようなイベントが理想です。その時に日本を代表するようなスター選手に参加していただければ参加人数も増え、盛り上がると思います。

9.             レフリー

ラグビーのレフリーは大変な仕事です。なかなか評価(ほめられる)されることがありません。しかしレフリーがいなければ試合が成立しません。

「静岡東部ラグビーコミュニティ」ではレフリーの存在をしっかり評価し、質を高めようと取組んでいます。謝礼金として1試合3000円を支給しています。また、レフリー講習会(ルール説明会含む)を定期的に行いレベルアップをしていく方針です。

10.      運営

コミュニティを運営するには運営費用がかかります。基本は会費(正会員年6000円、賛助会員年3000円)で運営していきますが、この他に寄付金・助成金を募って活動することになります。NPOが社会的に認知されてきたので寄付金については集めやすくなったと思いますが不況で業績の悪い企業が多く苦しいのが現状です。グランド借用費、人件費(レフリー代、コーチ料、指導料)管理費(交通費、通信費)、広報費(インターネット維持費、広報誌発行)、普及活動(講演会、招待費)などがかかります。中心になるスタッフ(理事10名)が計画を立て進めていきます。やりたいことは多いのですが、実現可能なことから確実に実行し長続きできる体制を作ります。

11.      課題

NPO団体として活動する上で、まち創りに貢献したいと考えています。ラグビー以外での社会貢献活動・・たとえば競技場周辺の清掃(5月に行なうラグビー祭の前に実行予定)や海岸のゴミ拾い、養護学校へのサポート(盛岡の知的障害児が、ラグビーを通じて社会復帰している例もあり、参考にしたいと思います。具体的な活動は現在模索中)を検討しています。また4月から始まる学校週休2日の対応として土曜日のラグビー指導を考えています。NPO組織としての活動は始まったばかりです。学習しながら進めていきたいと思います。

12.      最後に

単独チームではなく、様々なチームのネットワークがNPO化された点では全国でも初めてだと思います。ラグビーがあまり盛んでない地域のモデルケースになるよう努力していきますので応援よろしくお願いします。また、同じような活動を進めている方、またはこれから進めようと考えている方の連絡お待ちしています。

 Mail oguro-seiji@pop02.odn.ne.jp

URL http://www1.odn.ne.jp/s-oguro/

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


(NPO法人とは)  Non-Profit Organization(非営利団体)

1998年に「特定非営利活動促進法」が施行された。この法律はボランティア活動をはじめとする市民が行なう自由な社会貢献活動の健全な発展を促進し、公益の増進に寄与すことを目的としている。すでに福祉、災害救助、国際協力、まち創り、スポーツ振興などさまざまな分野でNPOの活動が活発になり、その重要性が広く認識されている。日本では既に5000の団体がある。福祉や介護が多いが、スポーツ関係のNPO法人化も活発である。従来のボランティア活動が発展してNPO法人として公式に活動することが非常に多い。

 

高校と社会人との交流試合

 

 副代表の高橋先生と応援にきた家族

 

 

  安井理事(左)と小黒代表(右)

NZ選手との交流会(中央は秋山理事)

 

親子タッチラグビー(ラグビースクール)